はじまりのものがたり
時は、かれこれ30年以上前。
私がまだうら若き乙女であった(?)頃。
九州の大分県付近、特急列車の四人がけのボックス席だった。
前の席に二人のおばあちゃんが座っていた。
網棚の荷物を取るのを手伝ったのをきっかけに、おしゃべりをするようになった。
その時私は、引っ込み思案で人見知りにもかかわらず、
何の気の迷いか、たった一人の貧乏旅に出たことを、
おばあちゃんたちは、茶飲み友達二人旅の帰りだということを
そしてさっき家に電話をしたら、嫁が
ごはんを作って待っています、と
駅まで車で迎えに行きます、と
おばあちゃんたちは、そんなにあたたかく迎えてもらえると思ってないかったので、
途中駅弁を買ってしまったらしく、
このまま持って帰ると、嫁が気を悪くするかもしれない。
気まずくなるくらいなら、
駅弁を捨てて帰ろうかと話し合っていたらしい。
そんな時私と知り合ったらしく、
「駅弁を貰ってくれないか」と
一度は遠慮したのだが
これも何かの縁、と思いありがたくいただくことにした。
袖すりあうも多生の縁:
人との縁は単なる偶然ではなく、深い因縁によって起こるものであり、全て出会いは大切にしなければならない
もちろん縁とはいただいたお弁当ではなく、
交わした言葉、通った心
その日私は、最寄り駅の始発列車に飛び乗った。
勢いだけで始まった一人旅の初日。
私にとっては、はじまりのものがたり。
初めての一人旅で、
初めて触れあった人達。
この出会いから、私の旅の全てが始まったのだ。
この後、私は時々
下界から離れて旅人となる。
遠い昔の
はじまりのものがたり。
コンセプトは小さな、自分だけの感動
旅の種類はいろいろだけど、たくさんの気付きをくれる…